2012年2月18日土曜日

植物染色の研究

シケンジョでは植物染色の研究(耐光性の濃黒)もやっています。
昨今、天然嗜好から化学染料ではなく植物染料で染めた繊維製品に注目が集まっています。
植物染料は繊維に染着しにくいものが多く、その対策として鉄・銅・アルミ等の金属を微量に含む溶液に繊維を浸す媒染が行われています。
これにより染料の固着性能が向上し、染色した繊維は種々の発色を得ることができます。

しかしながら、これらは一般的に色の種類に乏しく(とりわけクロムが使えない現在は濃黒はほとんど存在しない!)高い堅ろう度が望めません(光で色が分解してしまう)。

そこでシケンジョでは
富士北麓のバナジウム水をイメージできる
「バナジウム」を新たな媒染剤とし、その有用性について以下のPointを意識して研究を行っています。

Point①植物染料では存在しない濃黒色をだす
Point②植物染料では存在しない耐光性をだす
Point③植物染料+バナジウム(富士山)のイメージ

そして今、シケンジョでは植物成分とバナジウムが濃黒に染色できることに着目し、試薬のほか実際に販売されている「五倍子」や「あせん」で染色テストを行っています。

植物染料(五倍子:ごばいし)
大きさは2~5cmくらい
植物にアブラムシが卵を植えつけたストレスによってできる「虫こぶ」で
ポリフェノールの一種「タンニン」を多量に含んでいます。

媒染に使うバナジウム化合物
バナジウムは青色のセラミック顔料「ターコイズブルー」の元です。
ターコイズはトルコ石を意味するそうです。
繊維に媒染すると緑色になります。

注:バナジウム化合物については入手先の説明を十分に読み、取り扱いに注意をしてください。



従来の媒染ではアルミ(上)や鉄(下)が用いられています。
鉄はやりすぎると錆のようなにおいが付着してしまいます。

毒性があり昔は「三度黒」など植物染料で濃黒をだすにはクロムを用いていました。


銅、排水基準があって染色にはあまり使われなくなってきています。
銀同様に抗菌性があるため果樹の消毒などに微量の銅が使われています。

(上垣)