2012年12月25日火曜日

イギリスのバース スパ大学がヤマナシ織物産地にやってきた!

イギリスの世界遺産都市バースにある、バース スパ大学(Bath Spa University)でファションやテキスタイルを学ぶ学生がヤマナシ産地見学にやってきました!!

この産地見学は、バース スパ大学の日本研修での目的地のひとつにヤマナシ産地が選ばれての訪問です。今回は産地組合傘下の企業さんたちと共に、これまで実施した「バスツアー」のノウハウをもとにしたスケジュールプランなどでお手伝いをさせてもらいました。

Mt.Fujiさんもイギリスからのお客さんを迎える準備は万端の様子です。
最初に向かうは渡縫織物㈱!
渡縫織物でデザインをされている渡辺貴子さんがバース スパ大学の前身であるデザイン学校の卒業生だという情報を入手工場見学の打診をしたところ、快く見せていただけることになりました。一行は意外なつながりに驚きながら、渡縫織物に向かいます。
渡縫織物では、まず古いフランスの生地の見本帳や渡縫織物で今まで作ってきた生地のストックなどを見せてもらいました。
バース スパ大学のティム先生(右側の男性)が織機の解説をしています。
実際、織物の生産現場は専門用語もとても多く、うまく通訳が出来るのかと心配していたのですが、始まってみるとそんな不安は一気に吹き飛びました。もともと、ティム先生は日本へ織物を勉強する為に留学し、その後は群馬県の桐生の織物産地で織物のデザインなどに携わっていた為、日本語も織りの技術に関しても完璧な方でした。
特に織物の知識に関しては今までシケンジョで産地を案内した方々の中でも一、二を争うほど詳しかったと思います。
工場の様子。

イギリスの繊維産業はほとんど残っておらず、このような織物工場を見る機会は滅多に無いようで、みんな真剣に見入っていました。


渡縫織物の見学を終え、学校の先輩である貴子さんを囲み、記念写真を一枚。
富士吉田に来たからには、お昼御飯は吉田のうどんです。
JAPANESE FAST FOOD!!
腹ごしらえした後はシケンジョで、世界でも唯一無二の手織り技術「甲斐絹」のお勉強です。
「甲斐絹」は平織りという織物の中では一番シンプルな織構造と複雑な染め技術を使い、薄いのに奥行き感のある複雑な柄を作り出すという、なんとも日本的な織物です。
甲斐絹の次はMt.Fujiを祀る北口本宮冨士浅間神社へ!!
手水場での作法もしっかりと。

冨士浅間神社の次は織物産地見学に戻ります。一行はリネン織物を得意とする㈲テンジンに向かいます。

こちらは驚きの長さのパンチカード(ドビ―織機用)
見上げる長さです。
こちらは通常の長さのパンチカード(ドビ―織機用)
なんと、テンジンのショールームでは冷えた体を温める、白玉ぜんざいを振舞ってくださいました。日本のOMOTENASHIの心、きっと届いたことでしょう

織物の生産現場の次は織物の後加工工場山梨県織物整理(株)へ!


ひととおり工場見学を終えると、社長から粋な計らいが!
なんと、工場にあるニードルパンチの機械を使い、一人一枚のストールを作るワークショップを用意してくれていました!!
ニードルパンチは10000本近くある針で織物を刺すことで繊維を絡ませ、生地に異素材をくっつけたり、二枚の生地を一枚にしたりする、特殊な後加工です。
仕上がり待ちは、ドキドキです。
完成!!!
出来立てホヤホヤのストールを巻いて記念写真。
次に向かったのは洋傘を作り続けて140年の老舗槙田商店株式会社。




傘の組み立て現場も見学。
傘生地をカットした後もキズが無いか確認します。

織工場で織られていた生地が、傘になっていました!
傘生地を織るところから組み立てるところまでの生産を一貫して出来るのは「槙田商店」ならではの強みです。
シャンブレー&蛙張りの傘はバース スパ大学の皆さまにも大人気でした。

シャンブレー:タテ糸とヨコ糸を別の色糸で織ることにより、見る角度で色が変わって見える生地。
蛙張り:中の骨が見えないように内側にも生地を張ってある二重構造の傘。


180cm幅の超大口のジャカード織機で織られた生地。
以上が0泊1日、ヤマナシ織物産地でのインターナショナルな産地見学の模様でした。
このように写真で振り返ってみても、かなり充実した産地訪問であったな、と思います。

産地企業の皆さんの受け入れ態勢もとても手厚く、終始笑顔で日程を終えることができました。(最後はヘトヘトになっていましたが。。)


ローカルを突き詰めるとグローバルになっていくという話を聞いたことがありますが、ホントにその通りだと思います。今回イギリスの方々が感動している場面は、やはり山梨独自のものであったり、各々の
織物工場が積み立ててきた独自の技術であったり、すべてローカルなものであったような気がします。
ものづくりは常に流行の中にありますが、それとは逆に、自分たちの歴史や技術を掘って掘って掘りきれなくなるまでローカルを突き詰めることも大事なのではないかと感じました。そのとき初めて世界に通用するようなものになっていくのではないでしょうか?

とにもかくにも、訪問した側、された側の双方にとって刺激になり、とてもよい機会になったと思います。
ハタヤさんたちにとっては、「ヨーロッパ市場」という魅力的な響きをもつ土地からやってきた若い学生さんたちの目をとおして、日本のテキスタイル産地も充分に魅力的だということが感じられた一日だったことと思います。

ご協力いただいた産地の皆さま本当におつかれさまでした!



(高須賀・五十嵐)