2014年10月30日木曜日

シケンジョ書庫より ヨーロッパオールドコレクション その③

「シケンジョ書庫より」、 ヨーロッパオールドコレクションの第3弾です。


シケンジョ創設時の大先輩が1905年(明治38年)以降、ヨーロッパに渡って
購入した生地見本をご紹介します。


今回は、ラメ糸が大活躍しています。




手前のオレンジに紺で「ハ」の字型になった糸の模様は、
織物組織のパターンと、図案としてのパターンの境界線上にあるような模様で、興味深いです。 


黄色く見える糸は、黄色い糸を金色のラメがカバリングしている糸です。

完全にラメが覆っているわけではないので、黄色い芯も一緒に見えているのですね。




ここで、ラメ糸といえば、
2012年には、ヤマナシハタオリトラベル 夏の産地見学バスツアー」に
京都から駆けつけて参加してくれた、京都のラメ糸メーカー泉工業(株)の
山田命音(やまだ・めいね)さんを思い出しました。

 

ラメ糸のことを書く以上、ちゃんと用語を確認しなければと思い、さっそく
泉工業㈱さんのHPで訪問。
(参考)

泉工業株式会社 丸撚・羽衣撚など、金銀糸の形状
http://kinginsi.ldblog.jp/archives/51393870.html


調べてみると、上のラメは「蛇腹撚」「羽衣撚」の中間くらいに位置するのでしょうか?


ここで、正確を期すため、
実際に泉工業㈱の山田命音さん
写真を見てもらって、コメントをいただくことにしました。



 
山田命音さんは、ラメ糸メーカー、泉工業㈱の営業セクションで、
ラメ糸をコンシェルジュする専門職、「ラメピスト」として活躍し、
コーポレートカラーのグリーンに身を包み、
手作り感たっぷりのメルマガ『「みどりむすめ通信」ラメトーーク
を担当するなど、独特のパワフルな情報発信力と行動力で
さまざまなメディアにも取り上げられている方です。



シケンジョテキ史上初かもしれない、外部コメンテーターとのコラボです。



では、山田さんコメントをお願いします!


-山田命音さん

「文中の撚糸名など、適切に表現して頂いていると思います!!

きれいな織物と、きれいなラメ糸ですね。


これ・・・現在の『ラメ糸』とは性質が違う可能性がありますね。




現在のものは、ポリエステルなどの、プラスチックフィルムに


金属を蒸着させて製造されています。


いうなれば、フィルムに金属の薄膜を付けている状態です。



しかし、ポリエステルフィルムや、蒸着法が開発される前は、


金属の『箔』を使用していました。



日本では、『和紙』をベースとして、


金箔などを、漆を使用して接着させるのが一般的でした。


これを細く裁断して 芯糸にカバリングします。



海外は、薄めの金属箔(金箔よりはだいぶ厚い・アルミホイル的なもの)


を細く裁断して、芯糸にカバリングするのが一般的だったろうと思います。


今でも、ヨーロッパからの輸入物の洋服に、


『銅箔』のラメ糸が使用されていたりします。



『蒸着製の薄膜ラメ糸以前の、海外のラメ糸のあり方』についても


いずれ ちゃんと調べてみたいものです・・・。



この生地のラメ糸は、撚糸も とても綺麗ですね・・・。」



なるほど、現代のラメとは違うものなんですね。

大変参考になりました。


山田さん、ありがとうございます!




 波打つラメ糸。これは金ラメの「丸撚」ですね。





  この生地は、じつは台帳に裏がえしに貼ってありました。
   
 ひっくり返してみたのが、こちらです。
  ↓

  その裏側(台紙に貼ってある状態では表側)
 ↓



この生地のラメ糸についても、山田さんからコメントをいただきました。


-山田命音さん
「『C01-1601』の生地に使用されているラメ糸は


『平糸』形状で、パープルとゴールドのリバーシブルに見えるのですが、


実際はどうなのでしょう?


この雰囲気・・・帯っぽいですね。


『コマバク』という、『帯』に使用する、西陣独特のラメ糸が思い起こされます・・・。

機会がありましたら、本物いつか拝見したいです。」






なるほど、確かにリバーシブルに見えますね・・・。

コメントをいただいたこの生地について、
もっとよく見えるように撮影してみました。

こちらです!





↑この写真では、たしかにがリバーシブルになっているようにも見えますが、
よく見てみると、リバーシブルではなく、金色の箔と、紫色の箔、それぞれ別々のものが
一緒に合わせて撚り合わされているようにも見えます。




山田さんに、この写真も見ていただくことにしました。

 

京都の山田さん、いかがですか?


-山田命音さん



「拡大画像ありがとうございます。

《合わせて撚り合わされている》とのご報告を受けましたので、
再確認いたしました。

何度見ても・・・《合撚》したように見えないという
違和感があります。

なぜ・・・紫の箔の分量だけ多いのでしょう??


リング撚糸などで、2本の糸を一本に撚り合わせると、
この場合だと、が同量出てくるはずです。

 

と、そのとき・・・

突如現れた弊社社長 
(編注=泉工業(株) 福永 均社長)

「これ、の箔を芯にして、の箔をカバーリングしてあるのか~」

山田「ああああ!
だから芯になる、の箔の見え方の方が多いんですね!」

これでスッキリしました。
弊社にも丹後ちりめん用で、箔に箔を巻きつけた構造の糸はありますが、
けっこう珍しい部類だと思います。

箔×箔のカバリング撚糸は、撚りにくいですし、織りにくいだろうと思います。
シルクなどの糸へのカバリングだと、糸強度を増すことも出来ますが、
箔(ラメ糸)が芯だと、余程強いものでない限り、
たいして強度も増さないだろうと・・・。

せっかくですので、簡単なイラストをつけておきました。
勉強になりました、五十嵐さんありがとうございます!!」


泉工業(株)の山田命音さんによる図解です。





なるほど、×のカバリングなんですね。
イラストまで描いていただけるとは!
 
の方が多く見える」という点に着目した山田さん、

一目みてその構造を把握した福永社長、お二人ともさすがです。

大変勉強になりました!





ラメ糸特集、まだまだ続きます。


 経糸に金ラメの丸撚とオレンジのシルク、緯糸に銀ラメの丸撚と水色のシルク。贅沢です。




これは黄色に金ラメの「蛇腹撚」ですね。




糸の浮きの多いふかふかした地紋を、ラメ(蛇腹撚)がきりっと締めて光沢を与えています。
 

ここから先は、同じタイプのラメ糸が緯糸に使われているシリーズです。
まとめてご覧ください。
 














ラメ糸が活躍した第3弾、いかがでしたでしょうか。


ご協力をいただいた泉工業㈱の福永社長、山田さん、ありがとうございました!


それでは、また次回をお楽しみに!



 (五十嵐)